NVCの考え方

ノンバイオレント・コミュニケーション(NVC)というものがあります。これは、何と言うのでしょう、カウンセリングの技法でもないし、人の心に関する理論というのも少し違うような…。人とコミュニケーションをとる時に、こんなふうにコミュニケーションをできるといいよね、という、ひとつのコミュニケーションの取り方ですね。NVCの創始者であるローゼンバーグという人は、ロジャーズのお弟子さんだった人のようです(ロジャーズというのは、私が大事にしているパーソン・センタード・アプローチという考え方の創始者です)。

NVCではコミュニケーションを、観察、感情、ニーズ、リクエストという4つのポイントで見ていきます。たとえば誰か他の人の振る舞いをみる時に、その人がどんな状況でどんな行動をしているのか(観察)、どんな気持ちでいるのか(感情)、その人は何を求めていたり何を必要としていてそんな気持ちになっているのか(ニーズ)、という観点から見てみます。私たちは相手がどんな気持ちかということは気にしていることが多いと思いますが、その背景にその人のどんなニーズがあるのかということには目をあまり向けていないように思います。しかしニーズに目を向けてみると、少し相手に優しくなれるような気がします。怒っている人がいるとして、「その人は何を必要としているのだろう、自分を尊重してもらうことなのか、みんながルールを守ることなのか…」と考えてみると、その人の気持ちがもう一歩わかるような気がするのです。

自分自身の気持ちについてもNVCでは、観察と感情とニーズを分けて伝えることを勧めます。相手の振る舞いを見て、「勝手なことしないでよ!」とただ怒るのではなく、その人がしているどんなことに接して(観察)、自分としてはどんな気持ちになるのか(感情)、そして自分としては何を必要としているのか(ニーズ)を分けて伝えるわけです。「あなたが部屋を片付けないでいると、自分としては居心地が悪いし、苛々した気持ちになる。私は、完璧にではなくてもいいけれど、部屋がある程度片付いていて、通路が歩ける状態になっていたり、テーブルの上が使える状態になっていてほしいと思っている」というように。そして、(命令ではなく)リクエスト、つまり具体的な要望を伝えるわけです。「だから、この部屋から離れる時には、出したものを片付けてほしいのだけれど」。ポイントは、相手のことを「あなたは…だ!」と断罪するのではなく、あくまで自分自身の気持ちやニーズとして伝えるというところにあるのだと思います。

NVCについては日本語訳の本も出ています。興味のある方はチェックしてみてください。