認知行動療法とブリーフセラピーについて

カウンセリングの世界では、現在、認知行動療法と呼ばれるやり方がかなり勢いを持っています。認知行動療法は効果の実証研究が進んでいること、仕組みがわかりやすく納得しやすいことが、その理由の一部であろうと思います。私は認知行動療法を専門にはしていないので、いろいろと地味に反論(といいますかそれ以外の方法の弁護)をしたくもなりますが…でも、認知行動療法的な考え方やアプローチが、カウンセリングの中である範囲で役に立つことは確かです。そして、そのようなアプローチが必要となるような問題や、そのようなアプローチが合っているクライアント(来談者)さんがいらっしゃることも確かです。

私は認知行動療法は専門にしていないと書きましたが、認知行動療法的な視点からのアプローチ(認知的なアプローチや、行動的なアプローチ)もしないわけではありません。ただ、私は、いわゆる「認知行動療法」という名のもとにそういったアプローチを導入するよりも、対話の中にそのような視点が自然に織り合わされていく方が好みです。そして対話の中に認知的・行動的なアプローチが織り合わせていく上では、「認知行動療法」と考えるよりも、ブリーフセラピーという方法、中でも解決志向アプローチと呼ばれる考えの枠組みで考えていく方が、自分にとっては自然にできるように感じています。私の感覚では、解決志向アプローチは認知行動療法と共通した部分を持ちながらも、より柔軟で、軽やかさのある方法のような気がしています。

いや、柔軟であるかどうかは、アプローチの種類ではなく、カウンセラーによるのかもしれませんね。柔軟な認知行動療法家は、きっとたくさんいると思います。認知行動療法ではなく他のアプローチを推したくなるのは、「売れている」認知行動療法に対して私の中に少しやっかみがあるのかもしれません。

認知行動療法やブリーフセラピーは、どちらかというと「先に進めようとする」アプローチなのだと思います。私が大事にしたいと思っているのは、「ちゃんととどまって、今の自分に(穏やかに)向きあう(それによって自ずと先に進んでいく)」やり方です。そういうやり方は、あんまり流行らないのかもしれないけれど(…やっぱり、やっかんでいるかな)。