フォーカシングとは?

フォーカシングとは、シンプルにいうと、自分の体験してること、感じていることを、ちゃんと感じる、ということです。

フォーカシングは心理療法の研究からうまれました。哲学者でもあったユージン・ジェンドリン (Eugene Gendlin) は、カール・ロジャーズ (Carl Rogers) との共同研究の中で、心理療法がうまくいくかどうかはどんな内容が話されたかよりもむしろ、クライアントがどのような話し方をするかに関連しているということを見いだしました。言いよどむようにして、自分が体験しているけれどもまだはっきりとは言葉にならないような感じに注意を向け、それを新鮮に言い表そうとする時に、心理療法はうまくいくのです。

たとえば、あなたは今、どんな気分でいますか? あなたはこの問いかけに対してすぐさま、「大丈夫です」とか「普通です」とか、あるいは「サイアク」などと答えることもできます。でも、本当のところはどうでしょう? 「本当のところ、どんな気分でいるんだろう」と自分の胸の内に問いかけてみましょう。すぐに答えをひねりだそうとしないで、自分が日々の生活の中でどんなふうに感じているのかを、ちゃんと感じてみる時間を取りましょう。そうすると、そこにはまだ言葉で表現していないけれどもなんとなく感じていた気持ちや、感覚、感触のようなものが、漠然とですが感じられるかもしれません…

この、まだはっきりしない漠然とした感じを、「こんなものには意味がない」と邪険にせずに、優しくそれに注意を向けましょう。それは、あなたの中でひらき展開していく何かの、最初の芽生えなのです。その芽を踏みつぶしてしまったりせず、その感じがどんなものを内に抱えていて、どんな方向へとひらきたがっているのか、興味をもって見守りましょう。

このように、立ち止まって、自分が感じていることをちゃんと感じるプロセスを、ジェンドリンはフォーカシングと名づけました。そして、自分の感じていることをちゃんと感じるということを誰でも学べるように、フォーカシングのやり方を整理しました。つまりフォーカシングは、私たちが何かを感じるという時におのずと起こっているプロセスの名であると同時に、自分が感じていることをちゃんと感じるための方法でもあるのです。

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