心理士の仕事について

心理士の仕事には大きくわけて、心理面接、心理査定、臨床心理学的地域援助、調査・研究があります。心理面接とは心理療法や心理カウンセリングのことで、心理査定は心理検査などを通じてその人の特性や心理的な課題などを明らかにすることです。「セラピスト」という呼び名は、主に心理面接をしている時の心理士の呼び名だと考えていいでしょう(心理検査を専門におこなう心理士は「テスター」と呼ばれます)。また、臨床心理学的地域援助とは、個人だけでなく学校や企業、地域などのコミュニティに働きかけるような仕事をいいます。

近年では、たとえばスクールカウンセラーなど、臨床心理学的地域援助への需要が増えているような印象があります。コミュニティへのアプローチでは、たとえば学校の先生に生徒との関わりについて心理学的な立場から助言をしたり、企業の管理職と相談してうつ病を患った社員の復帰に向けて環境調整をしたり、地域の中で啓蒙活動をおこなったりというように、アドバイスをしたり問題解決に向けて積極的に動いたりすることが心理士に求められます。その意味で心理士は、助言をする人としての役割や、問題を解決する人としての役割を社会から期待されているのだと言えるでしょう。

ただ、私個人は、心理士の仕事の中心は心理面接であると考えています。つまり私は心理士が、人が自分自身で主体的に動けるよう、まなざしを向け、耳を傾け、その人自身の感じ方を尊重する、という役割を本質的に担っていると考えているのです。もちろんこのことは、アドバイスをすることや問題解決に向けて動くことと矛盾するわけではありません。むしろセラピストとしての態度は、心理士がセラピスト以外の役割を担う時にその土台となるものだと言えるでしょう。この態度があるからこそ、心理士がセラピスト以外のことをやっている時でも、その援助は心理士の専門性にもとづいていると言いうるようなものになるのです。

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