フォーカシングと心理療法

フォーカシングは心理療法の研究から出てきたものですので、当然、心理療法に応用することで心理療法を豊かなものにできるはずです。しかし技法としてのフォーカシングをそのまま心理療法の中で提案すると、多くの場合、不自然に響きます。「ちょっと止まって、そのことをあなたの内側ではどう感じているか、感じてみる時間をとりませんか」と言われたら、多くのクライアントは戸惑ってしまうのではないかと思います。

大事なのは、まだ言葉になっていないけれど感じている何かに目を向けるということが、豊かなこと、大事なことであるということをセラピストが知っているということ。そして、その何かにクライアントとセラピストが一緒に目を向け、耳を傾けることだと思っています。二人の人が一緒に何かに注意を向けることを発達心理学の領域では「共同注意」と呼びます。共同注意は子どもが言葉を覚える上で大事な役割を果たすのですが、私は、人が自分の感じていることに注意を向けられるようになること(フォーカシングできるようになること)上でもこの共同注意の関係性が大事なのではないか、と考えています。

フォーカシングの心理療法への応用についてはいま論文を書いているのですが、大学の紀要に載せてもらうつもりなので、あまりいろいろな人には読んでもらえないかもしれません。でも、可能であればいずれウェブサイトに掲載しようと思っています。