遊戯療法(プレイセラピー)

遊戯療法(プレイセラピー)は、正確には心理療法の一つの流派というわけではありません。心理療法が言葉のやりとりでなされるのではなく、遊びを通じてなされるものがすべて遊戯療法と呼ばれます。ですから遊戯療法には、精神分析的な遊戯療法、パーソン・センタードな遊戯療法、ユング派の遊戯療法など、いろいろな流派の遊戯療法があります。

子どもとの心理療法では、遊びを通じた心理療法がおこなわれることが少なくありません。子どもは言葉でのコミュニケーションがうまくできないので仕方なく遊びを通じて心理療法をするのだと思われるかもしれませんが、考えようによっては、大人はうまく遊べないので仕方なく言葉による心理療法をしているのだ、と言うこともできるかもしれません。そのぐらい、遊ぶということには豊かな成長の可能性が満ちています。子どもは遊びを通じて、本当にいきいきと自分の気持ちを表現します。遊びでは相手を攻撃してやっつけることだって、死んで生まれかわることだってできますし、言葉ではなかなか表現できないようなやりきれなさをセラピストに味わわせることだってできるのです。子どもは遊戯療法の中でもさまざまな理由で十分に自由に遊べないこともありますが、セラピストと一緒にいる空間の中で豊かに遊ぶということができれば、子どもの自己治癒力は最大限に発揮されます。

心理の専門家が子どもに対しておこなうアプローチが、常に遊戯療法だというわけではありません。発達に難しさを抱えた子どもの場合には、自由に遊ぶ遊戯療法よりも、専門家がリードして子どもの発達を促す課題をおこなうような療育的なアプローチの方が適している場合もあります。しかし発達に難しさのある子どもに対しても、遊戯療法による心のケアが役に立つことは少なくありません。

子どもが日常生活の中で元気に過ごせるためには、大人が生活環境を整えてあげることが必要だったり、保護者が余裕を持って子どもに接せられることが重要だったりもします(子どもを心理療法に連れてこなければいけないような状況下では、保護者の方もいっぱいいっぱいで、余裕を持てないでいることが多いのです)。そのため子どもの遊戯療法をおこなう際には、遊戯療法と並行して別のセラピストが保護者の方とお会いし、環境についての相談をしたり、保護者の方が自分をいたわれる時間を取ったりすることもよくあります。